自転車を盗まれた

自転車を盗まれた。

 

 

自転車に名前をつけて可愛がってやる習慣が僕にはある。

今回の自転車はルインという名前だった。

破滅、という意味だ。愛着が湧く。8月に買ったばかりだった。

 

 

ルインの先代も実は盗まれており、

3か月ぶり人生5度目の自転車盗難。

思い返せば自転車との別れは全て盗難だった。

 

 

3か月前、度重なる盗難を経て盗み手に対する

内々から湧く怒りの感情を抑えられず、

それらの気持ちを込めてルインと名付けた。

それなのに、もういなくなってしまうなんて・・・。

 

 

とりあえず犯人の良心に賭けて1日待ってみたものの、

良心あったら盗んでないわけで。

返ってくるわけもなく。

覚えておけよ。マジ。

 

 

わがアパート(マンション?)には

防犯カメラがひっそりと設置されている。

恐らく気づかなかっただろうな。哀れな犯人め。

すぐ突き止めてやるからな、と息巻いて管理会社と警察に電話。

 

 

どちらも秒で着電。

 

 

管理会社は悲しみに満ちた僕の心に寄りそいをかけらもくれてやらず。

「警察に連絡しな。」と一言。

映像もその後じゃないと見せられません、と。

かわいそうに。

人の心を忘れてしまっているな。寄りそえよ。俺の心に。

 

 

めげずに警察。

「えーでは防犯登録番号をー・・・」。よりそい0。お前もか。

 

 

日本人の心は寒空の下冷え切っている。

盗みに、よりそいのない社会に・・・。

 

 

結局警察に尋ねられた防犯登録番号(自転車についてる黄色いシール)は手元の情報では分からなかったので、自転車を買ったお店に連絡。

 

 

あのー、実はこの前買った自転車が盗まれちゃってー。

「お調べしますのでいつ頃かったか教えてくださーい」

寄りそいがあるわけもなく。

「結果が出るのに1日程度お時間いただきまーす」

自転車も戻ってこない。

 

 

ダメだ・・・俺の心の冷えを感じる・・・。

心の温かさがほしい・・・。

 

 

携帯に手をかける。

そうだ。自転車が盗まれたとそういえばつぶやいた。

ツイッターで。そういえばそうだった。

リプライが来ていてもおかしくないはず。

あたたかなリプライが。

 

 

「2重ロックしろよ」

「(最後に見てから盗まれるまでの時間)わずかでもないな」

 

 

ここは日本。

大体「傘」と「自転車」は持ち主の意に関係なくこの冷たいコンクリートジャングルを循環し、人の手を渡っていく。